城島明彦・著 本体1400円
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株式会社 こう書房
東京都新宿区矢来町112
第2松下ビル
TEL:03-3269-0581
*目次より
本書を手にとったあなたに〜プロローグ
第1章 巨大なるベンチャー魂にさえ、収まりきれなかった男たち
1 つねにめざすのはナンバー1だ!〜有力企業取締役を渡り歩いてきた人生
平松庚三(アメリカ・オンライン ジャパン社長)
2 フランスのサムライから飲料業界の信長へ!〜ソニー最強の子会社をつくり上げた男
内藤由治(ポッカコーポレーション社長)
3 チャレンジ精神が世界への道を切り拓いた〜ソニーの留学制度を変えさせた男
中井純(日本通信常務)
4 ロータス日本法人を始動、今は孫正義と組む〜ソニー流フロンティアスピリッツを受け継いだ起業家
菊池三郎(カーポイント日本法人社長)
5 MBAを武器に有力企業を踏み超える〜一部上場企業常務から2億6000万円企業を創設
熊谷卓也(IDS社長)
6 ベンチャースピリッツを受け継いだ起業家〜日本初、マイクロソフトと提携したソフト業界の風雲児
戸高修(CIS社長)
7 人との出会いで新しい扉を開いていく男〜鉄人のトライアスロン人生
新堀進(コダック取締役)
第2章 入社も退社も夢のため。チャンスは常に追いかけろ!
1 世界を駆け抜ける日本最強の交渉人〜ソニー一の英語の使い手といわれた男
植山周一郎(国際経営コンサルタント、翻訳家、サッチャー日本事務所代表)
2 リストラは新たなチャンスだ!〜五○歳からソニーを利用してベンチャー起業に成功
豊郷和之(ザイブナー日本法人社長)
3 情報通信の未来をソニー以上に読んだ男〜究極のビジネス起ち上げ人
長尾清(フェアサイドマーケティング社長)
4 波乱万丈。ただ今、7社目〜井深社長の教えに従い!? 転職を繰り返す
井上基(日本BEAシステムズ社長)
5 中米支社からアスキーへ、「戦場」を駆け巡る〜修羅場多数の発展途上人
小笠原直樹(充電中)
6 世界的経営者の英知を仕事の糧とする男〜井深大、ビル・ゲイツ、ジャック・ウェルチ、この三人から学んだこと
宮本喜一(翻訳家)
第3章 踏み台にしてこそ感じられる、ソニースピリッツの真髄
1 人を育て、飛躍させる――ソニーという企業と盛田昭夫の心〜大学教授、著述家、米国弁護士、三足のわらじを履く男
阿川尚之(慶応大学総合政策学部教授)
2 ソニーから借りた恩は親子二代で返す〜技術屋人生を支えたソニーの精神
堀昭一(インフォミックス日本法人社長)
3 ソニー流経営で父の会社を再建〜ソニーからサプライチェーン・マネジメントを持っていった男
小平忠(輸送経済新聞社社長)
4 夢のためにソニーを出、夢のためにソニーに戻る〜踏み台にされることで成長する、ソニーの真の強さ
金田晃一(ソニー社会貢献室)
*プロローグより
◎本書を手にとったあなたに ―― プロローグ
この男たちを見よ。
転んでも、ただでは起きぬ。
ベンチャースピリットに燃え、
限りない夢を追って、
ソニーを踏み台にした、
たくましくて、したたかで、凄い奴ら!
広告コピー風にカッコよくいうと、こういうことになろうか。本書に登場するのは、ソニーを手前勝手な理由で辞めた連中ばかりである。彼らは「SOBA」(ソニー・オールド・ボーイズ&ガールズ・アソシエーション)という名の、ソニー非公認の「落ちこぼれOB会」を結成している。愉快なのは、その例会にソニーの現役の社長や副社長がゲストとして喜んで顔を出し、「ここだけの話だが」などといって、楽しそうにスピーチすることだ。盛田昭夫ファウンダー(創業者)も、病に倒れる前に「私も出席したい」といっていた。こんな会社は、どこにもない。
ソニーは面白い会社である。組織は、あってなきが如く、直訴、下剋上、部下を引き連れての「脱藩」が黙認されている。ただし、自分から意思表示をし、行動を起こさないと、何もしてくれない。そういう会社である。「何をやりたいのか」「どうしたいのか」という明確な意志を持ち、それを上の者に認めさせる説得力と行動力のある者にとって、ソニーほど素晴らしい会社はない。だが、そうでない者には、辛くて面白くないところだ。
ソニーを動かし、引っぱっているのは、世間一般の尺度で計ると「異端」「異能」「破天荒」と評される強烈な個性を持った人間である。彼らは、好き勝手なことを許すという、創業者の井深大が掲げた「自由闊達」なコーポレート・カルチャー(企業文化)の中で、個性と個性をぶつけ合い、才能と才能が火花を散らす激しい生存競争を勝ち抜いてきた「スーパー・エリートたち」なのである。
そういう会社だから、「あいつ、上司の目をかすめて、一体、何をつくっているんだ」とか「社長に反対されても、まだあの研究を続けているようだ」という話を小耳に挟んでも、社員は誰も驚かない。ウォークマンは、社員が仕事としてではなく、趣味で音楽を楽しむために別の商品を改造したところからスタートしたし、MDも最初はこっそり隠れて開発していた。平面テレビ「ベガ」にしても同様で、各人がバラバラに勝手なことをやりながら、世界で最初にそれを開発してしまった。つまり、命令系統や組織は、あってなきに等しい状態なのである。こういう形態をとっている企業は、世界広しといえど、ソニー一社だけだ。このような魔可不思議な職場環境を、ソニー社員時代に発明したエサキ・ダイオードでノーベル物理学賞をもらった筑波大学元学長の江崎玲於奈は「organized chaos」(組織された混沌)と表現する。
秩序と無秩序がきわどいバランスを保っている「一種の異端企業」ソニーで、SOBAの連中はどんな仕事をし、何を得、どんな理由でソニーをスピンアウトしたのか。そしてその後、どういう生き方をしてきたのか。それを紹介するのが本書だが、単なるサクセス・ストーリーではない。
彼らは皆、優秀だが、だからといって、必ずしも正当に評価されたわけではなかった。仕事内容、評価、給料、処遇などに対する不満がなければ、誰もソニーを辞めたりしない。そのことだけは、はっきりしている。それならいっそのこと、ソニーを踏み台にして外に飛び出し、自分の夢と可能性に賭けよう。こういうことなのである。
予備知識1……ソニーのスピンアウト軍団「SOBA」
ソニーを踏み台にしている男たちは、例会と称して年に一回集まることになっている。会場は、東京・JR有楽町駅前の電気ビル二○階。社団法人日本外国特派員協会(わかりやすくいえば、外人記者クラブ)のバンケットルーム。たとえば九九年は、二月二三日夜七時に集まった。受付には「SOBA年次総会」と書かれた案内ボードがかかっていたが、年次総会と銘打つほど大仰なものではない。飲んだり食べたりしながら、情報交換したり、雑談する、肩の凝らない会費一万円の立食パーティーである。
会の呼び物は、ゲスト・スピーカー。九六年がソニーの出井伸之社長、九七年はプレイステーションで知られるソニー・コンピュータエンタテインメントの徳中暉久社長(現ソニー本社専務)、九八年は「ソニーの知恵袋」といわれる財務・経理部門の総帥、伊庭保ソニー副社長。そして九九年のゲストは、スカイパーフェクTV代表取締役会長だった卯木肇。だった、と書いたのは、ほどなく同TVの社長になったからである。正式には四月一日付で、そうなった。
卯木は終始上機嫌で、放送業界の現在と未来についての興味のつきない話を冗談を交えながら四○分間延々としゃべって、この日集まった会員を喜ばせた。
九九年の例会では、この日の集まりを最後にSOBAを脱会せざるを得なくなった男がいた。脱会理由は、一度はソニーを辞めたが、ソニーが忘れられず、九九年五月一日付で「ソニーに出戻った」からだ。勝手に辞めていった人間を、何の抵抗もなく、すんなり受け入れる。ソニーには、そういう懐の深さがある。
予備知識2……SOBAの沿革と入会規約
企業のOB会というのは、普通、その会社を定年まで勤めた元社員や元役員で構成される。ソニーでいうと、「ソニー友の会」がこれに該当する。そのほか、「ソニーグループに一年以上在籍した退職者の会」というのもあり、こちらの会員数は一万人近い(九八年現在)。これができたのは八六年。ソニーが創業四○周年を迎えたときに、盛田昭夫(当時会長)が「同じソニーの中で仕事をした人たちとの絆をもっと広げようじゃないか」と発言したのがきっかけで、誕生した。
この二つが「ソニー公認」のOB会なのに対し、SOBAは前述したように「ソニー非公認」。代表世話人の平松庚三(AOLジャパン社長)によれば、
「ソニーの外国部(海外事業部門)からソナム(米国ソニーの愛称)に出向していた気の合う仲間たちが帰国後に始めた飲み会からスタートし、そこに外国部以外の人も加わって次第に人数が増えてきたのです」
しばらくは会の名前もなかったが、小平忠(輸送経済新聞社社長)と河上正三(日本ガイダントVI事業部長)が加わって、外人記者クラブでSOBAという名称や会則を決めた(というほど大げさなものではないが)。九二、三年のことであった。彼らは現在、会の世話人である。
SOBAが「設立趣旨」として掲げているのは、次の二つだ。
1 ソニーで永年ともに仕事をし、現在多方面で活躍するスピリット豊かな元ソニーマン&ウーマンの交流と親睦の場を提供する。
2 自由闊達にして愉快なる理想「人的ネットワーク」を建設する。
一つめは、どうということはない。ソニーのことをよく知っている人が思わずニヤリとするのは二つめの文章。ソニーの前身「東京通信工業」の設立趣意書に創業者の井深大が盛り込んだ文言「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」をちゃっかり戴いているというか、パロッているのだ。大体、SOBAのロゴマークからして、SONYのそれとそっくりである。会には「入会基準」と呼ばれるものもあるので、紹介しておこう。
1 ソニーならびにそのグループから円満退社し、現在も実業に従事する者。
2 ソニー在職歴通算一○年以上の者。
3 ソニー在職中に多大な貢献を残したと自他ともに、あるいはそのいずれかが認める者。
4 SOBAの趣旨に賛同し、その活動に積極的に参加する意志のある者。
三つ目の、ソニー時代に多大な貢献を残したと「自他ともに、あるいはそのいずれかが認める者」というところがソニーらしい。いや、ソニーOBらしい。この文面もまともに解釈してはいけない。勝手にそう思っている者なら誰でも入会OKなのだ。
何気なく読むと見落としてしまうのが、(2)の「ソニー在職歴通算一○年以上」。なぜ「通算」となっているかというと、前述したように一度ソニーを辞めて別の会社に入り、SOBAに入会し、何年かたったらまたソニーに戻った人間もいるからだ。しかも、普通の会社では考えにくいことだが、出戻って役員になった者が何人もいる。そしてそれをソニーの役員や社員は、ごく当たり前のことだと思っている。一度退社しようが、二度退社しようが、ソニーでは問題ないのだ。ソニーを辞める者に対して、役員や上司は「戻ってきたかったら、いつでも来いよ」とよくいうが、単なる社交辞令でそういうのではない。本気でそういっているのである。ソニーという会社は、そういう会社なのだ。
SOBAの入会規約は「一○年以上ソニーに勤務」としているが、実際には一○年未満でも入会OKである。要するに、何年かソニーに勤めていた者なら誰でも入会できるという、かなりいいかげんな会ではある。以上のことを頭に入れて本書をお読みいただくと、より理解しやすいのではなかろうか。なお、登場人物の敬称は略させていただいた。
一九九九年一○月
城島明彦
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