【プロが教える】
決算書を見れば 「危ない取引先」は見分けられる
(発売中!)
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[公認会計士・税理士] 杉山浩 + [公認会計士] 藤原哲・著 本体1600円
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株式会社 こう書房
東京都新宿区矢来町112
第2松下ビル
TEL:03-3269-0581
まえがき
はじめに
バブル期以降、大企業の倒産をよく耳にするようになりました。
これまで、大企業や歴史の長い取引先と取引していれば、その会社の財務状況などは、さほど気にする必要はありませんでした。ところが最近では、一流企業といわれた会社や老舗の会社の倒産のニュースが、ある日突然、耳に入ってきます。
しかし、実は会社は、ある日突然つぶれたりはしないのです。会社の決算数値を注意深く観察していれば、そこにはなんらかの前触れがあるものです。
会社は、業績や財務状態が悪くなってきていることを悟られると、取引先などから相手にされなくなるため、前触れとなるような情報は、なるべく外部に悟られないように、決算数値などを工夫する傾向があります。したがって、会社の決算数値の一部分だけを見て、単純に利益がでているから安心とか、資産をこれだけ持っている会社なら安心などと考えていると、ある日突然……ということになってしまいます。
ですから、安全な取引を維持するためには、取引先の決算書を注意深く読み、危険な兆候を見分ける必要があるのです。
しかし、いままでほかの会社の決算書など見たこともなかった人が突然、決算書の分析をしろといわれても、困ってしまうでしょう。だいたい、どうすれば決算書を入手できるのかさえ、わからないかもしれません。また、決算書を入手できたとしても、どこをどう見ればよいのか、途方にくれてしまうでしょう。利益はでているか、現預金はどのくらい持っているか、借金は多額でないか、といったことは決算書を見慣れていない人でもわかりますが、それだけでは「危ない取引先」を早期に見分けることはできません。
そこで本書では、いかに決算書を入手し、どのように分析するかを、わかりやすく解説することに努めました。本書を片手に決算書を見ていけば、決算数値の見かたのポイントがわかり、その会社の“危険度”が見えてきます。
本書には、次のような特徴があります。
1.実際の書類をなるべく多くとりいれ、具体性を高めた。
2.簡潔な解説を心がけ、1項目のページ数があまり多くならないようにした。
3.経理や財務の専門家でなくとも理解できるように、なるべく簡易な表現で解説した。
本書が、(1)仕入先について調査をし、安定供給の可能性を吟味したい方、(2)得意先や貸付先について調査をし、売掛債権や貸付金の貸倒可能性について検討したい方、(3)投資先等について、その適格性を評価したい証券会社、ベンチャーキャピタル、エンジェルなど、(4)企業買収などのときに相手先の企業価値を評価したい方 ―― などのお役に立てれば幸いです。
2001年6月 杉山 浩・藤原 哲
目次
はじめに
第1章 なぜ決算書の分析が必要なのか
取引上のリスクと相手先の調査
■ リスクにはどのようなものがあるか
■ 得意先は返済能力を調査する
■ 仕入先は安定供給力を調査する
■ 出資先は将来性を調査する
■ 出資を受ける場合は素性を調査する
■ 債務保証では財政状態・責任感を調査
■ 合弁では技術力と財政面を調査する
「危ない取引先」を見分けるいろいろな方法
■ 方法は相手によってそれぞれ
■ 登記簿謄本の入手・分析
■ 決算書の入手・分析
■ 会社案内等の調査
■ 代表者や役員の経歴書の入手
■ 事業計画書の入手・分析
■ 短期調査報告書の入手
第2章 決算数値の種類にはどのようなものがあるか
有価証券報告書で会社のグループ全体の状況がわかる
■ 上場企業の報告書は誰でも見られる
■ 有価証券報告書の提出義務者
■ 有価証券報告書の内容
決算公告で資産や損益がわかる
■ 中小企業の公告は入手しにくい
■ 決算公告の内容
■ 決算公告の入手方法
決算短信で決算内容のポイントがつかめる
■ 各社の決算が同じ形式で見られる
■ 決算短信の開示内容
■ 決算短信の入手方法
商法上の計算書類で決算の全体像がわかる
■ 3年から5年間保管される
■ 計算書類の入手方法
法人税確定申告書一式で決算の詳細な内容がわかる
■ 決算後に提出が義務づけられている
■ 法人税申告書の提出期限
■ 提出書類の内容
■ 法人税申告書の入手方法
■ 法人税申告書の信頼性
信用調査会社の調査資料で非公開会社の概要をつかむ
■ 非公開会社の情報入手に役立つ
■ 入手できる情報の内容とレベル
■ 入手ルート
個人所得税確定申告書で事業の概要がわかる
■ 決算書と申告書は保管されている
■ 個人事業主との取引における注意点
■ 個人事業主の決算書の内容
■ 法人の申告書・決算書との違い
■ 所得税申告書の入手方法
第3章 決算書類を入手するには
書店で入手できるもの
■ 書籍として市販されているデータ
株主・債権者の立場で入手できるもの
■ 株主が決算内容を知るのは当然
■ 招集通知の添付書類
■ 計算書類の閲覧など
■ 株主には帳簿閲覧権がある
インターネットで入手できるもの
■ タイムリーな情報開示が期待される
取引先から直接入手するもの
■ 入手できるかは力関係次第
■ 仕入先から入手する
■ 得意先から入手する
■ 貸付先から入手する
その他の入手経路
■ 公共的な機関で入手できる
第4章 有価証券報告書でここまでわかる
有価証券報告書とはどんなものか
■ なにに役立つか
■ 商法上の計算書類との違い
新会計制度の導入で財務内容がより明確に
■ 新しい会計制度の内容を理解する
■ 連結決算
■ キャッシュフロー計算書の導入
■ 税効果会計
■ 金融商品会計基準
■ 退職給付会計
貸借対照表とはどんなものか
■ 2つの形式がある
■ 貸借対照表の区分
■ さらに細かい区分
■ 項目の配列ルール
■ 各項目に計上するもの
貸借対照表で財政状態がわかる
■ 伝統的な分析手法と貸借対照表
■ 流動比率(%)で支払余力を見る
■ 当座比率(%)で換金性の高さを見る
■ 売上債権回転期間で不良資産の存在を見抜く
■ 棚卸資産の回転期間も分析する
■ 固定比率(%)で長期的な安全度を見る
■ 長期固定適合率(%)で財務の安全度を見る
■ 自己資本比率(%)は高いほうがよい
■ 経常収支比率(%)で不良債権の存在を見抜く
損益計算書とはどんなものか
■ 損益計算書の見かた
■ 損益計算書の区分
■ 包括的な利益がわかる
損益計算書で収益力と成長の見通しがわかる
■ 伝統的な分析手法と損益計算書
■ 注記に重要なことが書かれている
■ 会計方針についての注記
■ 主な注記事項
■ 後発事象についての注記
キャッシュフロー計算書とはどんなものか
■ 収益・費用とキャッシュフロー
■ 実現主義の考え方
■ 発生主義の考え方
■ 損益とキャッシュフロー
■ 3つの区分で表示する
■ それぞれの表示区分が示すものは
キャッシュフロー計算書で現金の収支がわかる
■ 営業活動によるキャッシュフローの分析
■ 投資活動によるキャッシュフローの分析
■ 財務活動によるキャッシュフローの分析
■ フリーキャッシュフローとは
■ キャッシュフローによる分析比率
連結財務諸表とはどんなものか
■ 関連会社をまとめて単一組織とみなす
■ 連結財務諸表のつくり方
■ 親・子会社の個別の財務諸表を合算
■ 親・子会社間の内部取引を相殺消去
■ 子会社でない関連会社については持分法を適用し、その会社の投資勘定を評価
連結財務諸表でグループ全体の状態を把握する
■ 連結財務諸表の分析
■ 企業集団の結合形態と分析
■ セグメント情報の利用
■ 関連当事者取引の利用
公開会社と非公開会社の決算書はここが違う
■ 中小企業の会計処理は税務が中心
■ 借入金の表示が異なる
■ 税金の表示が異なる
■ 引当金の表示が異なる
有価証券報告書で同業他社比較をしてみよう
■ ダイエーとイトーヨーカ堂
■ トヨタ、ホンダ、日産
■ バリュークリック、まぐクリック、ガーラ
第5章 法人税申告書でここまでわかる
別表一は申告書分析の第1歩
■ 青色申告か白色申告か
■ 期限内に申告しているか
■ 申告所得はいくらか
■ 会社の資本金はいくらか
■ 税理士の署名押印はあるか
■ 同族会社ではないか
■ 修正申告書ではないか
別表二で株主構成を見る
■ 同族会社かどうかを判断する
■ 株主構成で会社の状態が見えてくる
別表四で会社の税務上の問題点を把握する
■ 差額調整の計算書
■ 会社の税引後利益と所得金額
■ 通常の加算項目
■ 修正申告書のチェックポイント
■ 過去の税務上の否認項目
別表五で偽造申告書を見抜く
■ 別表五(一)で未解消差分を見る
■ 別表五(二)で納税状況を見る
別表七で会社の将来性を見る
■ 欠損金の明細と控除額が記される
別表十六で利益調整を見抜く
■ 償却資産の状況が記される
■ 会社の当期償却額は償却限度額に対して不足か超過か
■ 繰延資産の種類
■ 減価償却の明細表との整合性を確認
受取手形の内訳書で不渡手形や会社信用力の低下を推定する
■ 未決済手形が記される
■ 支払期日が決算日以前のケース
■ 前期と同一残高の場合は回収不能かも
■ 手形割引の割合や割引先に注意
■ 手形の振出人が要注意会社の場合
売掛金の内訳書で滞留債権や得意先の偏りを見る
■ 売掛金・未収入金が記される
■ 滞留債券の存在がわかる
■ 得意先の偏りから安全性をはかる
■ 未収入金の内容に注意する
仮払金・貸付金の内訳書で社長の資金流用や財テクを見抜く
■ 問題のある記載を見落とすな
■ 仮払金の相手先に注意する
■ 貸付金の担保や貸付理由を確認する
棚卸資産の内訳書を分析し不良在庫を洗い出す
■ 在庫明細を手に入れる
■ 滞留在庫・不良在庫の存在を見抜く
■ 在庫の回転期間分析をする
有価証券の内訳書で財テク失敗や社長の資金流用がわかる
■ 株の取得が記される
■ 銘柄が公開会社の株式の場合
■ 銘柄が非公開会社の株式の場合
買掛金(未払金、未払費用)の内訳書で粉飾を見抜く
■ 利益調整に使われることがある
仮受金(前受金、預り金)の内訳書で源泉税の滞納の有無を見る
■ 仮受金等の明細が記される
■ 仮受金が残るのは経理の正確性に問題がある
■ 何期分もの同じ前受金がある場合は
■ 預り金が残るのは資金繰りに危険信号!?
短期借入金及び支払利子の内訳書で会社の危険度のレベルを見る
■ すべての内容が記載されるわけではない
■ 借入先に注意する
■ 利率を見る
■ 借入金と支払利息のバランスを見る
役員報酬及び人件費の内訳書で会社の本当の力を見る
■ 年間の役員報酬総額が記される
■ 役員報酬で利益調整をすることも
■ 経営能力や役員の力関係がわかる
■ 人件費の内訳で余力がわかる
地代家賃などの内訳書で社長の誇張表現を見抜く
■ 活動範囲や規模が見えてくる
雑益、雑損などの内訳書で本業以外のリスクを理解する
■ 営業収益力以外の危険度にも注意
■ 有価証券売却損益、有価証券評価損
■ 為替差損益の理由を調べる
第6章 不正や問題点は決算書のここに現われる
架空売上を見抜く
■ 粉飾の典型は架空売上
■ 架空売上の手口その1
■ 架空売上の手口その2
■ 財務諸表から架空売上を見破る
■ 売掛債権の回転期間にも注意
資金繰りの悪化はここに現われる
■ キャッシュフロー計算書を入手する
■ キャッシュフローから資金繰りを見る
■ 資金繰りの悪化したキャッシュフロー計算書
■ 借入金の平均利率を見る
■ キャッシュフロー以外の財務情報を利用する
不良債券の存在はここでわかる
■ 新会計基準のみどころ
■ 売掛金の滞留状況を見る
不良在庫を推定する
■ 不良在庫とはなにか
■ 不良在庫はなぜ問題か
■ 決算書などから不良在庫を見つける
財テクの失敗はここで見抜く
■ これまでの企業会計では発見できない
■ 財テクの失敗は注記に現われる
■ 時価主義の台頭
設備の老朽化、陳腐化はこう推定する
■ 設備投資は悩みのタネ
■ 償却累計率から推定する
■ 有価証券報告書も役立つ
社長による資金流用は見破りにくい
■ 公表資料からはまず発覚しない
■ 社長の報酬は妥当か
■ 社長の個人会社が使われる
■ あやしい関連会社の存在を調べる
■ 取締役の取引明細で資金流用を見抜く
■ 関連当事者との異常な取引はないか
第7章 事業計画書で危険な会社を見分ける
事業計画書はここを見る
■ 事業計画書はなぜ作成されるか
■ 事業計画書の構成
■ エグゼクティブサマリー
■ 事業計画書本文
■ 会社概要で規模や株主を見る
■ 事業内容・コンセプトで成長性を見る
■ 製品・サービスの内容で競争力を見る
■ マーケット分析・マーケティング戦略
■ 競合状況で戦略の精度を見る
■ 経営チーム・経営組織で潜在能力を見る
■ 販売計画の合理性を見る
■ 購買計画の実現性を見る
■ 生産計画で原価削減の見通しを見る
■ 設備投資計画で収益への影響を見る
■ 人員計画で人員と人件費のバランスを見る
■ 研究開発計画で会社の存続性を見る
■ 財務計画で収益と資金の見通しを見る
事業計画数値算出の前提を知ろう
■ 財務計画は個別計画の積み重ね
■ 利益目標の立て方
■ 売掛債権回転期間の出し方
■ 棚卸資産回転率の出し方
■ 買掛債権回転期間の出し方
■ 掛売り・掛仕入・手形取引の比率
■ 短期・長期借入利率
■ 税率・税効果会計
事業価値はどのように算出されているか――DCF方式の概説
■ 事業価値の評価は立場で変わる
■ 簿価純資産方式と時価純資産方式
■ 収益還元方式と市場株価比較方式
■ DCF方式で評価する
[第1章●なぜ決算書の分析が必要なのか]より
◎取引上のリスクと相手先の調査
■ リスクにはどのようなものがあるか
ひと口に「危ない取引先」といっても、どういうことに対するリスクかによって、その見分ける方法は違ってきます。一般的には売掛債権の貸倒がありますが、リスクはそれだけではありません。
ここでは、どのような相手先に、どういうリスクがあるかを考えます。
■ 得意先は返済能力を調査する
得意先についての最大のリスクは、掛けで売り上げた代金の回収ができなくなることでしょう。また、資金繰りがきびしい会社では、回収が遅れただけでも自社の経営に大きな影響が出る場合もあります。
したがって、得意先については、事前にその返済能力を調査する必要があります。また、会社の財務状況は変化が激しいので、取引開始時だけでなく、定期的に調査をすべきです。
■ 仕入先は安定供給力を調査する
自社の仕入先が倒産しても、貸倒は発生しません。したがって、自社が金銭的損害を受けることはないのでリスクはゼロかというと、そうではありません。
仕入先がつぶれると、販売する商品を仕入れることができなくなってしまいます。もし、その仕入先からの商品が自社のメインの販売商品で、他社から同様の商品を仕入れることができないような場合、自社の経営に重大な影響を及ぼすでしょう。
また、倒産までいかなくても、欠陥品が多かったり納期を守らない仕入先との取引は、自社の信用失墜につながります。
したがって、仕入先についてもやはり、取引を始めるときに、その会社の存続可能性や技術力、商品の調達力などについて調査をすべきです。
■ 出資先は将来性を調査する
取引先は、仕入先や得意先だけではありません。個人として、または会社として他の会社に出資する場合も、出資者としてリスクを負います。
この場合、出資先が倒産すると、出資した金額が無価値になってしまうというリスクがあります。
株式を公開している、あるいは公開を予定している会社へ出資する場合、その値上がり益が期待できます。しかし、市場がその会社を「危ない」「今後の発展が見込めない」と判断すると、時価が下がり、出資した金額を回収できなくなります。もし倒産すれば、無価値になってしまいます。
したがって、出資先の調査の中心は、現時点の財政状態よりは、その会社の将来性が重要になります。
とくに、公開を予定しているベンチャー企業への出資の場合、過去の活動の結果を数値化した決算書よりは、将来の事業計画書やビジネスモデルの検討が重要です。
■ 出資を受ける場合は素性を調査する
自社に出資してもらう場合、こちらにリスクはないと思うかもしれません。しかし、相手先によっては大きなリスクになる場合があります。
出資してもらうということは、株主になってもらうということです。
株主には商法上、さまざまな権利が与えられています。典型的な権利としては、株主総会に出席して決議に参加することがあります。この権利を利用し、会社に嫌がらせをして利益供与を求めるのが、いわゆる総会屋です。
また、一定割合の株を外部の人間に持たれると、会社を乗っ取られるというリスクもあります。
さらに、株式の公開準備をしている会社では、反社会的勢力が株主にまぎれこむと、公開ができなくなってしまいます。最近では、反社会的勢力ではなくても、いろいろな意味で社会的に評判が悪い会社から出資を受けていると、それを理由に公開が難しくなったりすることもあります。
このように、出資を受ける場合も、いろいろなリスクがあるので、やはり相手先の調査は必要です。
この場合の調査では、相手先の素性や評判といった、数字には現われない部分も重要になります。素性については、株主構成を見ると、ある程度のことがわかります。
■ 債務保証では財政状態・責任感を調査
商売上、または社長同士のつながりで、債務保証を頼まれることがあると思います。
他社や他人の債務を保証すると、その相手先が支払不能になったときに、保証債務の履行を迫られます。また、これが連帯保証の場合は、相手先の支払能力には関係なく、保証債務の履行義務があります。
保証債務は、契約によっては、当初覚悟していた金額以上の履行請求をされ、共倒れをしてしまうケースもあります。このようなリスクを踏まえて、相手先の調査を十分にする必要があるでしょう。
この場合の調査では、相手先の財政状態が重要です。また連帯保証の場合には、相手の誠実さや責任感といった性格が、重要なポイントとなります。
■ 合弁では技術力と財政面を調査する
他の会社と合弁で事業を始めることがあります。たとえば、技術力を持った会社と販売力を持った会社が半分ずつ出資して、おたがいの利点を活かして共同で事業を行なう場合などです。
この場合のリスクとしては、相手先が期待どおりの技術や販売力を持っていないといったことがあります。また、技術力は持っているが、不動産投資の失敗で会社が火の車ということもあります。これでは、合弁によるメリットを十分に活かせません。
したがって、このようなリスクを踏まえ、契約前に相手先の調査を十分に行なうべきです。
決算書で相手先の財政状態を調査するとともに、相手先の技術力などについて、数値面との整合性も見ておく必要があります。
[第4章●有価証券報告書でここまでわかる]より
◎キャッシュフロー計算書で現金の収支がわかる
■ 営業活動によるキャッシュフローの分析
営業活動によるキャッシュフローがプラスだと、その会社には、本来の営業活動から十分な資金を生み出す能力が備わっていることになります。
営業活動によるキャッシュフローがマイナスの場合は、本業の業績不振が考えられるほか、回収が滞っている不良債権や長期在庫がないか、詳細に分析する必要があります。
このような分析には、すでに述べた収益性分析(売上高利益率など)や安全性分析(売上債権回転期間や棚卸資産回転期間など)の手法が役立ちます。
■ 投資活動によるキャッシュフローの分析
投資活動によるキャッシュフローがプラスの場合は、投資による支出よりも回収のほうが多いことを意味します。つまり、貸付金の回収や投資の売却が進められているわけで、従来の投資計画を変更し、一時的な資金回収を行なっている可能性があるのです。
もし、投資活動によるキャッシュフローがプラスで、営業活動によるキャッシュフローがマイナスなら、両者の関係も十分に分析する必要があります。
逆に、投資活動によるキャッシュフローがマイナスの場合はどうでしょうか。投資活動に積極的だと一応は考えられますが、ひょっとすると投資の効率が悪いのが理由かもしれません。営業活動によるキャッシュフローにもよく注意し、その会社の資金能力の範囲で投資が行なわれているかどうかを見る必要があります。
投資活動によるキャッシュフローのマイナスが、営業活動によるキャッシュフローのプラスを上回っている場合は、たりない分を財務活動によるキャッシュフローでおぎなうことになります。このとき、自己資本でおぎなう割合が高いほど安全性が高いのは、いうまでもありません。
もし、借入金など他人の資本に多く頼っている場合には、投資活動の失敗がたたって倒産するリスクは、それだけ高いと見なければいけません。
財務諸表でこのような指標を見たときは、固定比率や長期固定適合率などの安全性分析も試みるといいでしょう。
■ 財務活動によるキャッシュフローの分析
財務活動によるキャッシュフローがプラスの場合には、営業活動または投資活動によるキャッシュフローの不足を、財務活動によるキャッシュフローでおぎなっていることが多いと考えられます。他人の資本からの調達については、返済とのバランスも考慮する必要があるので、流動比率や自己資本比率などの分析もあわせて行なうとよいでしょう。
また、財務活動によるキャッシュフローがマイナスの場合には、資金の返済が調達を上回っているということになります。
この場合は、資金状況の好転にともなって財務体質の改善がはかられているかもしれないので、分析で確かめる必要があります。営業活動によるキャッシュフローがプラスか、投資活動によるキャッシュフローがプラスかなど、ほかのキャッシュフローとの関連性にも注意することが重要です。
かりに、財務活動によるキャッシュフローがマイナスで、営業活動もマイナス、投資活動はプラスだったとします。この場合は、借入金の返済に迫られたために、投資活動を控え、資産を売却するなど一時的な資金調達によってしのごうとしているかもしれません。
つまり、資金状況がひっ迫している可能性があるのです。
■ フリーキャッシュフローとは
会社が自由に使えるキャッシュフローのことを、フリーキャッシュフローといいます。これがあるときにはじめて、借入金の返済や株主への配当ができるのです。
フリーキャッシュフローは、会社の営業活動によるキャッシュフローから事業に必要なキャッシュフローを差し引いたキャッシュフローと定義されるのがふつうです。
これを計算書の上から見ると、営業活動によるキャッシュフローから投資活動によるキャッシュフローを差し引いたキャッシュフローということができます。
つまり、キャッシュフローを分析していくことで、会社にとって自由な資金がどのような用途に使われているかを読み取ることができるのです。
会社の財務戦略を知るために、フリーキャッシュフローは欠かせない指標といえるでしょう。
■ キャッシュフローによる分析比率
一般的に使われているキャッシュフローの分析比率は次のとおりです。
(1)収益性指標
●営業キャッシュフローマージン比率
=営業キャッシュフロー÷売上高
売上高が、営業活動によるキャッシュフローにどの程度貢献しているかを見る指標です。
●営業キャッシュフロー当期純利益
=当期純利益÷営業キャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフローと、当期純利益とのかい離の度合いをはかる指標です。
(2)安全性指標
●営業キャッシュフロー対流動負債比率
=営業キャッシュフロー÷流動負債
短期的な支払能力を表わします。
●営業キャッシュフロー対利息支払額比率
=(営業キャッシュフロー+利息受取額)÷利息支払額
金利支払に対する余裕度を示します。
●キャッシュフロー適合率
=営業キャッシュフロー÷(資本的支出+長期債務の返済額)
営業活動によるキャッシュフローで長期的な支出をどの程度まかなったかを示します。
●営業キャッシュフロー対負債比率
=営業キャッシュフロー÷負債
会社の本業による債務の返済能力がわかります。
(3)投資活動指標
●設備投資比率
=設備投資額÷営業キャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフローで設備投資をどの程度まかなったかを見る指標です。
●投資キャッシュフロー比率
=資本的支出÷減価償却費+有形固定資産の売却収入
会社の中・長期的な活動状況を見るのに役立ちます。
●投資効率
=投資キャッシュフロー÷営業キャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフローがどのぐらい、営業活動によるキャッシュフローでまかなわれているかを示します。
[第5章●法人税申告書でここまでわかる]より
◎別表一は申告書分析の第1歩
■ 青色申告か白色申告か
法人税の申告区分には、青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告にはさまざまな特典が用意されているので、なにも問題ない会社であれば、青色申告で申告しているはずです。
しかし、申告期限を守らなかったり、脱税などがあると、青色申告が取り消されることがあります。したがって、その会社が白色申告をしている場合は、青色を取り消されている可能性も一応、疑ってみたほうがいいでしょう。
申告が遅れたり脱税をしているからといって、その会社が倒産する可能性が高いとはいえません。しかし、少なくとも、ルーズな面のある会社だとみなしてもいいかもしれません。
通常、法人税申告書1枚目の紙が青色なら青色申告、白色なら白色申告です。コピーの場合は色で区別できないので、申告書別表一(一)の右上のところを見て確認しましょう。
■ 期限内に申告しているか
別表一(一)の左上に、税務署受付印が押印してあるはずです。これがないと、偽造の可能性もあるので注意しましょう。
その押印のまん中には税務署が申告書を収受した日付が記載されています。
確定申告の申告期限は、原則として決算から2か月以内、延長を申請すれば3か月までは認められます。したがって、遅くとも決算から3か月を超える日付の収受印が記載されている場合は、期限後に申告しているということになります。
■ 申告所得はいくらか
その会社の申告所得はいくらでしょうか。申告書別表一(一)下段の左上にある「所得金額又は欠損金額」に記載してあるのが、法人の申告所得の金額です。
ただし、申告所得は、会社の利益とは一致しません。大抵は利益よりも多い金額になっているので、注意しましょう。
■ 会社の資本金はいくらか
会社の資本金は、決算書を見なくても別表一(一)で知ることができます。上段のまん中ぐらいにある「期末現在の資本の金額又は出資金額」の欄に記載されています。
資本金は、大きければいいというわけではありませんが、会社の規模を見るひとつの指標にはなります。
■ 税理士の署名押印はあるか
税理士の署名は絶対に必要なわけではありません。
しかし、税理士の署名があるということは、会社が申告書を作成した場合でも、税理士が内容をチェックした証拠になります。それだけ申告書の誤りは少ないと考えていいでしょう。
■ 同族会社ではないか
その会社が同族会社かどうかは、別表一(一)の上段のまん中ぐらいにある「同非区分」を見るとわかります。
中小企業の多くは、いわゆる「同族会社」に該当するはずです。「危ない取引先」を見極めるうえでは、同族かどうかは決め手になりません。
しかし同族会社は一般に節税意識が強い傾向があります。このため会社と役員の間では合理的な取引が行なわれない可能性がある点に注意しましょう。
■ 修正申告書ではないか
別表一の四角で囲われていない部分の中央を見ると、そこの表示が「確定」申告書ではなく「修正」申告書となっていることがあります。そのような申告書は、確定申告書になんらかの過少申告があったので、その部分を修正して申告するためのものです。
修正申告書である場合は、どこを修正したかが問題です。修正内容については、153ページで説明する別表四を見るとわかります。

◎別表二で株主構成を見る
■ 同族会社かどうかを判断する
別表二は、その会社が同族会社かどうかを判定するための計算書です。同族会社であれば、利益の留保額に課税されます。
■ 株主構成で会社の状態が見えてくる
株式数の明細を見ると、大株主については、その持ち株数がわかります。
その会社がどのようなスタンスで事業展開しているかを見るうえでも、株主構成は参考になります。
(1)株主が社長およびその同族関係者のみの場合
中小企業、とりわけ零細企業は、ほとんどこれに当てはまると思われます。
(2)代表者が主要株主ではない場合
多くの上場会社では「経営」と「所有」の分離がすすんでいるので、代表者が主要株主となっていない例が多いはずです。
しかし、中小企業の場合、オーナーが、みずから会社を経営するのがふつうです。もし、代表者が主要株主となっていないとしたら、なにか特殊な事情があるかもしれません。
オーナーが会社をいくつも所有しているため、経営は各社に任せているケースもありますから、必ずしもマイナス要因ではありません。しかし、念のため事情は把握しておいたほうがいいでしょう。
たとえば、自己破産をしたために会社代表者になれないとか、脱税の過去があり、税務署にリストアップされるのを避けるため、などの理由も考えられます。
(3)業務上の提携関係にある法人が株主になっている場合
上場会社では当たり前ですが、非公開の中小企業では、取引先が株主になるケースは決して多くありません。非公開会社は、外部の資本が入るのを嫌がる風潮があるからです。
しかし、同じ中小企業でも、株式公開の準備をすすめているベンチャー企業などの場合は、事業で提携関係を結んだ相手先に株式を保有してもらうことがよくあります。
(4)投資事業組合やベンチャーキャピタルが株主になっている場合
まず間違いなく、現在、株式公開をめざしているか、かつてめざしたことがある会社と思われます。
別表二では、資本参加の時期まではわからないので、古い会社の場合、現在も公開をめざしているかどうかは確認できません。しかし、設立から間もない会社であれば、まず公開準備中と見ていいでしょう。
ただし、公開準備中の会社だからといって安全とはかぎりません。
若い会社で、公開をめざしていると公言していても、実はいつ倒産してもおかしくないような場合も少なくないのです。
(5)他社が株の大半を所有している場合
おそらく、ほかの会社のグループ会社になっていると考えられます。
この場合、その会社は、株主である親会社などの業績や方針に、大きく影響されます。グループ全体の業績が落ちているような場合には、とくに注意が必要です。
(6)その他
公開準備中の会社の場合、株主のなかに評判の悪い人物や会社が入っていることがあります。株式公開の妨げにもなりかねないので、顔ぶれにはよく注意しましょう。
──続きは書籍でお読みください──