ディズニーランド
「また行きたくなる」7つの秘密


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生井 俊・著 定価1470円(本体1400円+税5%) 2008年11月11日初版発行



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まえがき もくじ 本文より




まえがき



  はじめに

今から25年前の1983年4月15日。夢と魔法の王国「東京ディズニーランド」が開業し、アメリカ以外にディズニーのテーマパークができた歴史的な日となりました。

日本初の「テーマパーク」と銘打ったディズニーランド。
四半世紀以上にわたり愛され続けているこの場所は、ディズニーシーの入場者数とあわせ、のべ4億3000万人(2008年4月発表)もの人が訪れています。業績は好調で、入園者の9割以上が複数回来たことがあるリピーターです。

一方で、後発のテーマパークはどうも調子がよくありません。
ディズニーランドを調査して施設をつくってみたものの、「テーマ」にうまく魂を込めることができなかったのでしょう。人気映画やキャラクターを持つ関西の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」をのぞき、ほとんどが閉園や規模縮小へ。その間も、ディズニーランドをはじめとするディズニーリゾートは飽きられず、人気を独占しています。

なぜ、ディズニーランドだけが飽きられず、お客様(ゲスト)の心をつかむのか。
この本では、何度もリピートしたくなるディズニーランドの「秘密」を、「こだわり」「音」「変化」「教育」「心理」「マーケティング」「秘話」という「7つの視点」から解き明かします。そこから、「ディズニーランドに来たゲストがリピーターになる理由」をつかんでほしいと考えています。

最高水準にあるディズニーランドのサービス。その優れた仕組みをどうつくりあげていったのか、そして、その強みはどこにあるのか――。それを、自分自身のキャスト経験と、関係者へのインタビューなどもふまえて考察しました。
これらはきっと、あなたが携わる仕事でも「相手の先を読み、期待を超える、プレミア感のあるサービス」を生み出すヒントとして、活用できることでしょう。

開業25周年の合い言葉は「夢よ、ひらけ。」です。
ぜひ、ディズニーランドが大切にするサービスマインドを理解して、実践し、自分の夢に役立てていただければ幸いです。

2008年10月1日 東京ディズニーリゾートにて          生井 俊

※マニュアルではなく「コンセプトを徹底」することで臨機応変に判断できるキャストを育成していく手法については、前作『ディズニーランドが大切にする「コンセプト教育」の魔法』(こう書房)もあわせてご覧ください。



まえがき もくじ 本文より




目次



第1章 細部へのこだわりがお客様の心を魅了する
データから見えるディズニーランド
「ある部分」へのこだわりが魔法を生む
大型アトラクションの配置に隠された秘密
遊び心に満ちたいたずらが好奇心に火をつける
昼間でも、なぜか「こんばんは」とあいさつする場所がある
秘密のトンネルが掘られている理由
なぜ「ミッキーマウスはひとり」なのか
赤ちゃんがハイハイできるくらいきれいにする
ディズニーランドは「体験学習の場」
第2章 音に満ちた場所で胸が躍り出す
舞浜駅の発車ベルからすべては始まる
近づくたびに胸が高なるための工夫とは
テーマランドを区切る「音のカーテン」
スピーカーはどこだ!?
最先端の音響技術がパレードを華やかに彩る
極限まで挑戦するスウィングジャズに魅了され
人形にも音に合わせた演技を求める
第3章 常に変化・進化し続けるディズニーランド
常に安心・安全であるために  より安心・安全を求めて
ディズニーランドは「永遠に未完成」  だからつくり続ける
映画の世界との「行き来」で期待を高める
細かな変化で既存ファンも魅了する
アトラクション新設とプログラム入れ替えが新たな世界をつくる
未来に対する想いは  その時代により変化する
満足感と利便性を高めた店舗の大型化
テーマランドを追加する「面」による開発
改善点を指摘する声を集めるのはキャストの役割
第4章 なぜディズニーのキャストはモチベーションが高いのか
ウォルト・ディズニーの想いを受け継ぐ
常に新鮮な気持ちで「役割」を演じ続けるために
ものごとを判断する優先順位「SCSE」を徹底する
1日2回のミーティングがマニュアルに頼らないキャストをつくる
キャスト同士でも常日頃から礼儀正しく
見た目にもディズニーらしさと安全性を徹底させる
真剣な先輩の行動が新人のプロ意識にスイッチを入れる
キャストが高いモチベーションを維持できる仕組み
第5章 ディズニーの世界にはまる「心理学」
「あいさつ」「対応」「あいさつ」で好印象を与える
気がつくと横に並んで話しているキャスト
外からは「ちら見」  内からは「遮断」
どうして出入口が1カ所だけなのか?
ゴミ箱の数から飲食店の場所まですべて計算されている
夢と魔法の王国に「ない」もの
なぜ1日ですべてのアトラクションが回れないのか
「次へつなぐ努力」がもう一度行きたい場所をつくる
 《コラム:舞浜駅の仕掛け》
第6章 綿密なマーケティングの上に成り立つディズニーの世界
毎年10万人以上に対して行なう大規模なアンケート調査
あらゆる業種のトップ企業と比較されるディズニーランド
なぜディズニーランドの商品は高いのか
利便性を高め新しい価値観も提案したパスポート
「ファストパス」の導入で楽しみ方も変わってきた
オープン前のプレビューで戦略的な調整を繰り返す
アトラクションの導入決定前にも丹念に声を集める
2500万人のコンサルタント
第7章 ディズニーランドでは、なぜ奇跡が起こるのか 〜魔法の秘密〜
ゲストからの手紙と称賛はより良いサービスを生むきっかけになる
お子さまランチを注文した若いカップルの話
ディズニーランドへやって来た余命2カ月の女の子

エピローグ 〜奇跡は準備した者に訪れる〜



まえがき もくじ 本文より




[第1章 細部へのこだわりがお客様の心を魅了する]より



みなさん、こんにちはー!!
夢と魔法の王国、東京ディズニーランドへようこそ。

はじめに、みなさんに、お聞きしたいことがあります。
「ディズニーランドって、好きですか?」

はい、ありがとうございます。ボクの耳にも、あなたの答えが届きました。
「大好き!」
「まあまあかな」
「仕事がサービス関係なので気になっている」
……
いろんな考えの人がいます。
「ディズニーランドも、ほかのテーマパークや遊園地も、1度行けば十分」
「ディズニーランドは遠いからヤダ」
そんな意見もあるようですし、
「物足りないけど、子どもが喜ぶからやはりディズニーランドへ行ってしまう」
という方も多くいます。
オープンから25年を経た今も人気を維持しているディズニーランド。物足りなさを感じる人がいる一方で、繰り返し足を運ぶ「リピーター」も多くいます。

1章では、ディズニーランドの核になる「細部へのこだわり」を見ていきます。
2章以降では、そのこだわりを「音」「変化」「教育」「心理」「マーケティング」の5つの切り口から掘り下げていきますね。
それでは、どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。



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データから見えるディズニーランド



ディズニーランド未体験の方もいらっしゃることでしょう。まずはじめに、ディズニーランドの概要をご説明します。

東京ディズニーランドは1983(昭和58)年4月15日にオープンしました。「東京」という冠がついていますが、所在地は千葉県浦安市舞浜で、東京駅から電車で約15分離れた場所です。
ディズニーランドのほかに、海をテーマにした「ディズニーシー」、商業施設の「イクスピアリ」、2008年オープンの「ディズニーランドホテル」「シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京」などがあり、それらを総称して「東京ディズニーリゾート」と呼んでいます。

ディズニーランドの広さは51ヘクタール(約15万坪)、東京ドームがおよそ11個入る広さです。ディズニーシーやイクスピアリ、ディズニーランドホテル、海側に建つオフィシャルホテルなどを含めたディズニーリゾート全体では、200ヘクタールあります。

開園当時の年間入場者数は約1000万人。その後、増加に転じ、ディズニーシーオープン直前の2000年度には、ディズニーランド単体で1730万人の入園者数を記録しています。

現在は、ディズニーランドとディズニーシーを合算した入場者数のみが発表されています。2007年度の両パーク合わせた入園者数は2542万人。単純には比較できませんが、世界に目を向けても、これほど賑わっているテーマパークはなく、世界屈指の集客数を誇る場所といえます。

「ディズニーランドは、子どもが行くところ」
そんな印象をお持ちの方もいるかもしれません。
いえいえ、そんなことはないのです。

ディズニーランドを運営するオリエンタルランド社によると、入園者数の68・8%が18歳以上です(2007年度)。つまり、遊びに行く人の7割弱が、いわば「大人」。この数字からもわかるとおり、子どもの遊び場でもあるけれど、「大人も魅了する場所」です。
同じく来園者のサンプリング調査では、女性比率が74・1%というデータがあります。実に入場者の4分の3を「女性」が占めているわけですね。

このように、「大人と女性」が、ディズニーランドを語るうえで、ひとつのカギになります。

そして、ディズニーランドは「リピーター」の多さも大きな特徴です。
通算で2回以上来園しているリピーターの比率は、ボクが勤務していた10周年(1993年)の頃で約8割といわれ、現在は9割を超えています。

なぜ、こんなにも「何度も足を運んでくれる人」が多いのでしょうか。

それは、ディズニーランドが「非日常」の空間や時間を提供していることにあります。ここでしか味わえない体験であったり、「キャスト」と呼ばれる従業員との会話であったり。それにより、乾いた心にうるおいがもたらされます。
ディズニーランドは、はじめからあらゆる非日常の「体験」ができるよう精巧に設計されていて、そこにいる人たちは気づかないうちに興奮したり、感動するのです。

ディズニーランドで得られる非日常の体験が、ほかの場所でも簡単に得られるものであれば、人はそう繰り返し足を運んだりしません。また、ほかのテーマパークや遊園地もディズニーランドを追随しようと努力をしていますが、市場を変えるまでに至らないのも事実です。

なぜ、追随しようとしても、真似ができないのか?

それは、ディズニーランドが持つ「オンリーワン」のものやサービス、環境、空気などが関係しています。それを25年以上もきちんと維持管理し、ときには改善し、変化させてきたこと、そして良質な体験が加わることで、ゲストの中に「もう一度行きたい」という気持ちが生まれるのです。

そして、繰り返し来ても期待を裏切らず、「飽きさせない」仕組みがあります。
その仕組みは、すでに成功しているアメリカから持ってきたものですから、オープン当初から優れていました。そこに日本ならではのきめ細やかさが加わり、洗練されていきました。

その積み重ねが他を圧倒しているからこそ、ディズニーランドは高いリピーター比率を維持し続けることができるのです。



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[第2章  音に満ちた場所で胸が躍り出す]より


舞浜駅の発車ベルからすべては始まる



「ディズニーランド」といわれている場所。いったい、どこからどこまでなのでしょうか?

東京駅から千葉の蘇我駅までを結ぶJR京葉線。この電車に乗れば、東京駅からわずか15分で、ディズニーランドがある舞浜駅に着きます。
舞浜駅の手前、葛西臨海公園駅を過ぎると、海側にオフィシャルホテルが見え、ディズニーランドのシンデレラ城やいくつかのアトラクションが垣間見えます。
そしてディズニーランドホテルが見え、舞浜駅に着きます。駅名に「ディズニーランド」とはついていませんので、とくに代わり映えのしない、よくある高架の駅です。

この京葉線に乗ってディズニーランドへ向かったとき、ボクは「舞浜駅のホーム」から、すでにディズニーランドが始まっていると考えています。
その理由の1つに、ディズニーランド周辺を包んでいる「音」があります。

ディズニーランドは、五感を刺激しながら用意周到に世界をつくりあげています。
五感の中でも、もっともわかりやすいのが「音」によるきっかけづくりです。胸が躍るような場所をつくるために、気分が高まり、楽しくなるような音楽を流すこと。それを「きちんと」コントロールしています。

電車を降りたらすぐに改札に向かわず、ホームで少し待っていると、発車のベルが鳴ります。ここで耳を傾けてください。

聞こえてくる発車ベルはメロディーで、スプラッシュ・マウンテン(映画『南部の唄』)で流れる「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」(1番線)と、イッツ・ア・スモールワールドで流れる「小さな世界(世界はひとつ)」(2番線)があります。だれもがきっと「ああ、この曲!」と感じるはずです。
また、2008年4月15日から1年間限定で、25周年のテーマソング「魔法の鍵〜The Dream Goes On」が発車メロディーとして流れています。石井竜也と高杉さと美が歌うこの楽曲、CMで耳にした方もいるかもしれませんね。ぜひ、聞いてみてください。

ディズニーランドが見えたり、ディズニーならではのメロディーが流れてくると、心がウキウキ、ワクワクしてきます。その胸が踊る感覚は、電車の車窓と、舞浜駅の発車メロディーからすでに始まっているのです。



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[第4章 なぜディズニーのキャストはモチベーションが高いのか]より


ウォルト・ディズニーの想いを受け継ぐ



1955年7月17日、アメリカ・カリフォルニア州アナハイム。
この日、世界で最初の「ディズニーランド」がオープンしました。
そのとき、創設者のウォルト・ディズニーは、次のページに紹介したようなスピーチをしています。
日本語ではこんなニュアンスです。

「この幸せな場所に来てくれたみなさん、ようこそ。
ディズニーランドは君たちの国です。
ここは、大人が過去の楽しい日々を取り戻す場所です。
そして、若者なら未来への挑戦や約束を味わえる場所かもしれません。
ディズニーランドを、アメリカを築いた理想と夢と困難に捧げます。
ここが世界中の喜びと感動の源となることへの願いを込めて。
ありがとう」

ウォルトは、ディズニーランドについて数々の言葉を残しています。今も語り継がれているものが多くありますが、この実に短くシンプルなオープニングのメッセージに、そのすべてが集約されているといっても過言ではありません。

「大人でも楽しめる遊園地をつくりたい」

ウォルトは、子どもを連れて遊園地に行ったときに、ベンチしか居場所がなかったと回想しています。遊具で遊ぶ子どもを眺め、自分はベンチに座りずっとピーナッツを食べて過ごすしかなかったという苦々しい経験があったのです。

そこで、大人でも楽しめる場として、デンマークのコペンハーゲンにあるチボリ公園を参考に、ディズニーランドを構想し、つくりあげました。
だからスピーチではまず、大人に語りかけたのです。ディズニーランドは「あなたの場所」であり、そして「過去の素晴らしい思い出に浸れる」と。

ディズニーランドで働くキャストはまず、ウォルトの生い立ちと、ディズニーランドへの想いをビデオで学びます。
もちろん美化されている部分もありますが、それを差し引いても、ウォルトという人物は偉大で、数多くの思想を残してきたことが「映像」として印象に残ります。

これが、テキストに書かれていて、先生が読み上げていくような研修だったら、心に残るフレーズはあるかもしれませんが、「強烈な原体験」とまではならないでしょう。それに、言葉だけでは「各人が自分の判断基準で理解してしまう」可能性があります。
そういった意味で、オンステージに出る前に「ビデオを見て映像で理解すること」は、思想を深く知り、共感する心を持つうえで重要なことです。

ウォルトのスピーチで、ディズニーランドが「世界中の喜びと感動の源となる」という部分があります。
そのためには、いつでも喜びやインスピレーション(感動)につながるハードとソフト(人)が必要です。
おもちゃ売場でパッと見て欲しくなったおもちゃのように「ちょっと遊んだら飽きちゃった」「いらなくなった」という場にしてはいけない――。そんな想いが、最初から強くあったわけです。

その想いを忘れないために、ウォルトは先ほど紹介した「ディズニーランドは未完成」という言葉を残しています。オープンから25年を経た東京ディズニーランドも、今なお完成しておらず、「発展の途上」にあると考えています。

世界中の喜びと感動の源であり続けるために、より良い姿を模索し、常に進化してきたのが、ディズニーランドの歴史です。 そして今も、ウォルトの言葉・思想をかたくなに守り、ディズニーランドを支えているのが、ディズニーランドで働く従業員、つまりキャストなのです。



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まえがき もくじ 本文より




生井 俊(いくい・しゅん)

作家。1975年生まれ、東京都出身。小学5年生の時、『ファミコン必勝本』(現・宝島社)でライターデビュー。高校時代、東京ディズニーランドでエレクトリカルパレードの運営をサポートするキャスト(従業員)を経験。ディズニーランドが大切にする「笑顔」と、ゲスト(お客様)にハピネスを提供するホスピタリティあふれるサービスを体得する。大学時代、国内初の交換留学制度を利用し、京都・同志社大学へ「留学」。早稲田大学第一文学部卒業後、株式会社リコーに入社。お客様満足度(CS)ナンバーワン企業ならではの、すぐに対応し好感度・信頼度を高めるサービス哲学を学ぶ。ITソリューション営業として仙台支店(現・リコー東北)配属。リコー退社後、都立高校の育休代替教諭として教育現場に携わる。国語科とよく間違われるが、実は英語科に所属。現在、ディズニーランドとホテルのサービスを語る作家として活動中。
近著:『本当にあった ホテルの素敵なサービス物語』(こう書房)
連載:「日経4946File」表紙コラム、@IT情報マネジメント「ブックガイド」ほか


■blog■
http://ikui.exblog.jp/




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