働くことの喜びは
みんなディズニーストアで教わった


表紙    背表紙

加賀屋克美・著 定価1260円(本体1200円+税5%) 2005年7月10日初版発行



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まえがき もくじ 本文より




まえがき



  ■ まえがき ■

みなさん、こんにちは!! 加賀屋感動ストアーマネージメントの加賀屋克美です。
「あれ?『社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった』の外伝なのに、書いてる人が違う?」なんて思った人もいるかもしれませんね。

実は『社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった』の香取くんは、私が18歳のときに一緒に東京ディズニーランドで仕事をした同期であり、親友であり、ライバルでもあるんです。香取くんの2作目の本『社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった II 《熱い気持ち編》』に登場する「佐賀屋」という人物は……実は私のことなんですよ!

本場アメリカのディズニーワールドで仕事をしたい!! という夢を現実にするために英語を猛勉強し、本当にアメリカに行った私のお話、みなさんも読んでくださいましたよね? このお話で、多くの読者に夢への挑戦と情熱、そして感動を伝えることができたのではないかな……と思います(もし、まだ読んでないようでしたら、ぜひ読んでくださいね! 香取くんの2作目の本の173ページからです)。

前回は香取くんが書いてくれましたが、今度は自分の言葉で、自分が学んだり経験したお話をみなさんに伝えたいと思い、ペンをとりました。日本のディズニーストア、そしてアメリカのディズニーワールドで勤務した際に学んだ「販売スタッフが楽しみながらお客様に商品を提案・提供することの大切さ」や「お客様に喜んでもらえるサービス」について、そして私のポリシーである「あきらめないこと」などについて、まとめてみました。

商業施設で仕事をしていたり、小売業・接客業・サービス業をされている方、これから販促に力を入れて売上を伸ばしたいと思っている方、そして夢への挑戦を続ける方などが、この本からなにかを感じ、今後の仕事に役立てていただけたら幸いです。

それではいってみましょう! ディズニーのサービスと販売の世界へ!!




まえがき もくじ 本文より




目次




  まえがき


第1章 夢をつかみたいんだ! だからここで働くんだ!!
夢への挑戦は12歳のときに始まった
  ★東京ディズニーランドのお兄さんになりたい!
  ★「おたく」を超えたら「博士」になる
夢の実現へとつながる第一歩
  ★ディズニーランドのサービスだけでは通用しない?
  ★どんなことでも、やってみないとわからない!!
楽しく買い物をしてもらう ―― それがディズニーストアのテーマ
  ★いよいよ初日! がんばるぞ!!
  ★やっていることはディズニーランドと同じだ
キャラクター名を覚えるのもお客様のため
  ★ちょっとクイズをだしちゃおうかなぁ
  ★誰にも負けないディズニーマニアになってやる!
たった1枚のチラシにも、さまざまな意味がある
  ★ディズニーストアでのお仕事デビューは「グリーター」
  ★興味のない人にまで配るのがサービスなのか?
  ★全員に配ることが「お客様のため」になるんだ!
「自分のお客様」をつくらなくちゃ
  ★いちばん人気があるのは、このぬいぐるみです
  ★いまのお客様、2日前に君が担当した方だよね?
お客様の「思い出に残る」接客がしたい
  ★千葉のお店を見にいこうよ!
  ★あっ! いた!!
  ★商品よりも先に「買って」いるもの
お客様からの贈り物
  ★かがやおにいさん おもちゃありがとう
  ★えっ!? 転勤?
お客様と「思い出」を分かち合うことができるんだ
  ★初めてのことだらけで頭がパニック
  ★転勤先のお店までわざわざきてくれた!
アメリカへの切符が目の前に
  ★せっかくのチャンス! ぜったいに応募しなさい!!
  ★やる前からあきらめない!
いまできることを精いっぱいやる
  ★なにか方法があるはずだ
  ★応募者10人のうち合格はたったの4人!
I WILL DO MY BEST
  ★いざ、面接会場へ!
  ★たとえ英語がダメでも、この気持ちはわかってくれ!!
  ★強い思いが奇跡を起こす


第2章 ついにきたアメリカ! たくさんのことを吸収するぞ!!
いよいよアメリカでの仕事が始まる
  ★アメリカでも最初はやっぱり「グリーター」
  ★親も子供もみんなが「子供」
ありったけの「ハート」をこめて
  ★もっとお客様と会話をしなきゃ
  ★親しい人と会話をするように
「NO」といったら、そこで終わってしまう
  ★そのぬいぐるみは品切です
  ★その先に続く気持ちを考えて
私たちは「喜びの瞬間」を買ってもらっているんだ
  ★いったいどんなぬいぐるみなんだろう?
  ★もっともっとハッピーにしてあげたい
知識があれば、もっと親しくなれる、もっと喜んでもらえる
  ★こんなにいっぱいぬいぐるみがあるんだ
「完全な商品」を完全なままに展示し販売する
  ★棚に出ている商品が気に入らないの
  ★自分たちが商品を欠陥品にしていたのかも……
商品陳列の魔法
  ★この陳列のほうがおたがいにしあわせでしょ?
  ★商品とお客様のアイコンタクト
  ★大人の知らない「子供の世界」がそこにはあった
「ぬいぐるみマスター」と呼ばれて
  ★ぬいぐるみのことならKATSUMIにおまかせ!!
  ★ちゃんと商品のことを伝えたい!!
  ★「本当の知識」がないと喜ばれる提案はできない
お客様と一緒に「楽しむ」ことも大切なサービスなんだ
  ★子供と大人、スタッフとお客様、それぞれに役割がある
  ★え、棚の中に隠すの!?
  ★子供たちが楽しみにしているしなぁ
仕事や勉強を楽しく遊びながら覚えるアイデアがある
  ★うぁー、やりたくないなぁ!!
  ★いょーし!! 誰よりも早く戻すぞ!!
  ★どうせなら「楽しく」「おもしろく」
本気になれば方法は見つかるもんだなぁ
  ★お客様へクリスマスソングをプレゼントしよう!!
  ★歌詞が、英語だ……
  ★先生は子供たち
お客様に初めてできた「最高のプレゼント」
  ★ついに歌声を聞かせるときがきた!
  ★子供たちと一緒に歌おう!!
  ★聖歌隊と一緒に移動するお客様も!!
従業員も感謝される、だからお客様にも感謝できる
  ★こういうの、どこかで体験したことがあったなぁ……
  ★スタッフはみんな家族なんだ
「喜んでもらいたい」気持ちを誰に対しても持っている
  ★最後だからこそ、最高の笑顔で
  ★アメリカ人はけっこうドライなんだなぁ
  ★最後の最後に「素敵な思い出」を


第3章 伝えていきたい! これまでに教わった「大切なこと」を
「新鮮さ」と「うきうきワクワク」を持ち続けたい
  ★入りたての新人スタッフみたいになってる?
  ★すべてが珍しくて目新しい
自信を持って主張する! お客様の笑顔のために
  ★日本限定発売のぬいぐるみ
  ★ぜったい売れる! お客様のためにも追加してもらわなくちゃ!!
  ★ルールは「制限する」ためだけにあるんじゃない
最初に伝えたかった大切なこと
  ★教わってきたことを、新しい人に教えていかなくちゃ
  ★「あなたから買いたい」っていってもらえたら、うれしいだろう?
きちんと説明して手本を見せれば「思い」は伝わるんだ
  ★「いらっしゃいませ」といわないのはなぜだと思う?
  ★親しい人に挨拶するように声をかけてほしいんだ
  ★教えていないのにまねしてマスターしている!!
喜んでもらいたい、喜びたい、ただそれだけ
  ★それがいちばん大切なんだよ!!
  ★その「気持ち」さえあれば、なにをすべきかは自然にわかってくるはずさ
あきらめないこと、思いを突き通すこと
  ★あのときあきらめていたらアメリカには行けなかった
  ★そんなこと、できるはずないよ!

  あとがき



まえがき もくじ 本文より




[第1章 夢をつかみたいんだ! だからここで働くんだ!!]より



お客様の「思い出に残る」接客がしたい



●千葉のお店を見にいこうよ!●

せっかく私から買いたいと思ってくれるお客様ができていたのに、自分はそれに気づいていなかったということを知った次の日。その日は仕事は休みで、ふだんであれば東京ディズニーランドへ行ったりと、どこかへ出かけるのですが、昨日のことが気になって、どこにも出かける気になりませんでした。

そんなわけで、ひとり家でふさぎこんでいるところに、電話のベルが……。

〜 プルルルル プルルルルル ガチャ 〜

「はい、加賀屋です」
「もしもし〜! 笈川で〜す。加賀屋くん、今日、仕事休みだろ??」
(なんだ〜、笈ちゃんかよ〜、人が落ち込んでるってのに、朝から元気だなぁ……)
「いまから千葉のディズニーストアを一緒に見にいこうよ。俺まだ行ったことがないんだ。お店の大きさや商品棚の数によって販売のしかたが異なるんだよ、加賀屋くん! 一緒に勉強しにいこうよ。それじゃー現地集合ね〜!!!」

ガチャッ

……。

笈ちゃん、仕事が好きだねぇ……、熱い男だねぇ……。
あまり気乗りはしなかったのですが、私はしぶしぶ着替え、待ち合わせ場所へ向かいました。



ページ見本



●あっ! いた!!●

しばらくして待ち合わせ場所に着きましたが、笈ちゃんはまだきていません。そこで笈ちゃんがくる前に私はさっそく偵察を開始しました。このお店のスタッフには、自分が東京の店のスタッフだとは知られていないので、お客のふりをして、あくまでも自然に、自然に……。

「こんにちは!! ようこそ。どうぞ、ごゆっくりご覧ください」

おー、自分もいつも、こうやってやってるんだなぁ。なんか気持ちいいねぇ〜。

そんなことを感じながら店内をうろうろしていると、小学生くらいの女の子がものすごい勢いでお店に走りこんできました。そして、息を切らせながら店内をキョロキョロ見回しています。

おっ、あの子はきっと、なにか商品を探しているんだな。よし、ここのスタッフがどんな接客をするか、お手並み拝見といこうか。

と眺めていると突然、その女の子が大声で叫びました。

「あっ! いた!!」

女の子が指を差した先にあったのは、ぬいぐるみでも、その他のおもちゃでもありません。腰を低く落として女の子を両手で迎えている、ひとりの女性スタッフでした。

あれっ? 商品じゃなくて……その人を探してた……の?

女の子のすぐあとから、お母さんも現われました。女の子は女性スタッフと手をつないで、とてもうれしそうです。それを見るお母さんも笑顔です。そして、スタッフと女の子とお母さんの3人で一緒に楽しそうに店内の商品を見てまわっているのです。

これだぁ! 自分のお客様をつくるって、こういうことなんだ!!

●商品よりも先に「買って」いるもの●

私にとって衝撃的な光景でした。

あの女の子も、女の子のお母さんも、商品を買うよりも先に、あの女性スタッフの人柄を買っているんだ。小学生の女の子にとっては、話し相手になってくれて、おもちゃを一緒に探してくれるお姉さんと会うことのほうが楽しいし、大切なんだろうなぁ。うれしそうに女性スタッフと手をつないで歩く女の子の笑顔を見ればわかるよ。

自分の中で、なにか迷いがふっ切れた瞬間です。

「これが、ディズニーストアがめざすサービス、“ファミリーエンターテイメントショッピング”なんだぁ」

よし! 自分も変わらなくては!! 自分のお客様がたくさんつくれるように、そして、そのお客様に心ゆくまで買い物を楽しんでもらえるように!!

その後、笈ちゃんと合流して店内を見てまわりましたが、私が見ていたのは商品の陳列や棚の配置などではなく、そこで働くスタッフのことばかりでした。

お店から出ていく子供に元気よく手を降って見送るグリーター・スタッフ。ビデオのコーナーで家族連れのお客様に新作ビデオの説明をしているスタッフ。どのスタッフも、笑顔で親切丁寧にお客様に応対しています。それも、たんに売り場や商品を案内するのではなく、お客様ときちんと向き合い、親しげに会話をしているようなのです。

また、子供のお客様と話をするときにはもちろんしゃがんで、きちんと子供と目線を合わせて話しています。あ、これはディズニーランドと同じだぁ。相手が大人でも子供でも、きちんとお客様の顔を見て、目線を合わせて応対するというディズニーのやり方は、物販でもパークでも変わらないんだな。

ディズニーランドのスタッフは、来園されるお客様がアトラクションやパレードを楽しみ、その1日が「楽しい思い出」となるようにお手伝いします。同じようにディズニーストアのスタッフは、お客様がショッピングを楽しみ、「買い物にきたその日が楽しい思い出」となるようにお手伝いするのが仕事だということに気づきました。

パークと物販では、お客様へのお手伝いのしかたも、1日に応対するお客様の数も違います。でも、「お客様に楽しい思い出を持って帰ってもらいたい」というディズニーの考え方は、どちらも同じだったのです。

そのために、いまの私に必要なのは、商品の陳列方法よりも先に、自分がお客様の思い出になるくらいの「接客」だということに気づいたのです。


[第2章 ついにきたアメリカ! たくさんのことを吸収するぞ!!]より



お客様の「思い出に残る」接客がしたい



●いったいどんなぬいぐるみなんだろう?●

ペギーおばちゃんの「愛のあるサービス」でお客様に無事「卒業式のミッキー」をご案内できた翌日、私は仕事がお休みでした。でも、お休みの日も勉強勉強。その日も早起きをして、マジックキングダムへ向かいました(本当は遊びたいだけ?)。

ただ、今日はいつもと目的が違います。いつもであればアトラクションをまわって乗り物乗り放題(乗り物大好き!)といった「遊び」の要素が強いのだけど、今日の目的は商品施設を見学し、扱っている商品やお店のサービスを観察すること。本当に「勉強」しに出かけたのです。

パークに到着し、真っ先に向かったのは入り口に近いお店「エンポリアム」です。ここで、昨日の親子が欲しがっていた商品がどんなものなのか、調べることにしました。

卒業式ミッキーねぇー、どんな商品なんだろう?

店内をうろうろしていると、スタッフがさっそく声をかけてきました。

「こんにちは! なにかお探しですか?」
「実は、卒業式のミッキーのぬいぐるみを探しているんですよ」
「卒業式の格好をしているミッキーですね! どうぞ、こちらです」

そういって、卒業式ミッキーのぬいぐるみが置いてある棚まで案内してくれます。
あ、あった!

「これですよ!! この商品はと〜〜っても人気があるんです!! いま、ここでしか買えないんですよ。ぬいぐるみコレクターのあいだではすごく価値があるそうで、ひとりでまとめ買いする人もいるんです。もう、棚に置いてあるだけしか在庫がないので、早く手にとらないと(笑)」

私がワールド・オブ・ディズニーストアで働いていることを知らないそのスタッフは、満面の笑顔と少し大げさなジェスチャーで、サービストークをしてくれました。



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●もっともっとハッピーにしてあげたい●

へぇー、これが幻の卒業式ミッキーかぁー。そんなに人気があるんだぁ……。

ぬいぐるみを手にとり、しばらく眺めていると、私の背後から6歳くらいの女の子が商品棚に向かって走ってきました。

「ママー! あったよ!! 卒業式ミッキーあったよ!! わーい、やったー!」
「ダイナ、どこ? どこにいるの?」
「ママー、ここよ!! 卒業式ミッキーがあったの!!」
「わぁ、よかったわねぇ! きっとダイナのために、ここで待っていてくれたのよ。さぁ、ひとつ選んで、お家に連れて帰りましょうね」
「ママ、その前にレジにいかなくちゃ」
「そうね、そうだったわね(笑)」

女の子は熱心にお気に入りのものをひとつ選び、胸でギュッと抱きしめて喜んでいます。近くで見ているお母さんも、その姿を見て喜んでいます。

いゃー、いい光景を見させてもらったなぁー。これこそがディズニーストアのテーマである「ファミリーエンターテイメントショッピング」だね。「大から子供まで、商品を通じて、楽しみながらお買い物をしてもらう」―― まるで、このテーマにそった実写版ドラマみたいだったよ!!

このとき私は、小学生のときの自分の体験を思い出しました。あれは、たしか小学校5年生のとき。当時、大人気だった「ガンダム」のプラモデルが欲しくて、発売日の前日からお店の前に徹夜で並んだのです。そうしないと買えないほど人気のあった商品でした。そこまでしてやっと手に入れたときの達成感と喜びがいま、私の中によみがえってきました。

あの女の子も、昨日の親子も、きっとあちこち探して、やっとここで卒業式ミッキーを見つけ、手に入れたに違いありません。その喜びは、私が小学生の頃に感じたものと同じでしょう。

モノを売るということは、お客様に「喜び」を買ってもらうことでもあるのだということに、あらためて気づきました。自分は販売スタッフとして、商品を通じてお客様をハッピーにしているんだ、ということを実感したのです。

ならば、お客様をもっともっとハッピーにしてあげたい! もっともっと喜んでもらいたい!! そのために、いま私ができること、すべきことは、商品の知識をもっと身につけること。自分が働いているお店だけでなく、ディズニーワールドにある他のお店についても知ることです。

お客様のさまざまな希望を聞いて、期待に応えられる商品の提供や提案をし、お客様に喜んでもらうサービスをしなくちゃ!! よぉーし!! こうなったら、ディズニーワールドで販売しているぬいぐるみをすべて覚えるぞー!!

この日、私は新たな目標を見つけました。そして、またひとつ「モノを売る仕事」の素晴らしさ、楽しさを知りました。

そのとき手にとっていた卒業式ミッキーは、「自分の商品知識をステップアップさせる」ということを必ず実行する、という意味で、買って帰りました(たんに稀少なぬいぐるみが欲しかっただけ……じゃありませんよ!)。


[第3章 伝えていきたい! これまでに教わった「大切なこと」を]より



自信を持って主張する! お客様の笑顔のために



●日本限定発売のぬいぐるみ●

年末も迫る、ある日のことでした。本社から送られてきた企画書を見ると、お正月に販売する限定商品のなかに、ウサギの着ぐるみを着たクマのぬいぐるみがあると書いてあります。

この「着ぐるみを着たぬいぐるみ」シリーズは、アメリカでは大人気で、新商品の発売日にはお店の前に大勢のお客様が並ぶほどでした。でも、ウサギの着ぐるみを着たクマは、これまで見たことがありません。

おー!! なかなかおもしろい商品を開発したな。これは売れること間違いない。アメリカでも販売するのか聞いてみようと、さっそくアメリカのお店で一緒に働いていたペギーおばちゃんに電話をすることに……。

「ペギーおばちゃん!! ウサギの着ぐるみを着たクマは、アメリカでも販売する?」
「KATSUMI、ちょうどあなたにお願いするところだったのよ。実はその商品は日本だけなの」
「えーっ、日本限定??? 知らなかった。OK!! ペギーにひとつ買っておくよ、待っててね、販売は1月1日だから」

「なんで1月1日に販売するの?」
「うーん、なんでだろう……? あっ、そうだ!! 来年はウサギ年だからだ」
「ウサギ年? なにそれ?」
「あのね、日本には“干支”っていうのがあって、年ごとに12種類の動物が割り当てられていて、順番に変わっていくんだよ。それで、来年はウサギの年、その次は龍になるんだ」
「そしたら2年後は、龍の格好をしたクマが出るの?」
「たぶんね」

「わー、日本限定の商品、楽しみね! たぶん、人気あるんじゃない?」
「うーん……、でも日本では、アメリカみたいに流行していないよ」
「そうなの? だけど、アメリカでは買えないから、日本でまとめて買ってアメリカに送る人がいるかもよ。KATSUMIが勤務している店には何個ぐらいくるの?」
「たぶん、お店が小さいし、ぬいぐるみの売上も低いから、そんなにこないかもしれないよ」
「だめよ! ぜったい売れるアイテムなんだから、商品を追加しておかなくちゃ」
「そうだね、僕も売れると思う。明日、マネージャーに相談してみるよ」

ペギーと話しているうちに、どんどん「売れる!」という自信が湧いてきました。それだけでなく、お客様のために「売らなくちゃ!!」という気にもなってきたのです。



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●ぜったい売れる! お客様のためにも追加してもらわなくちゃ!!●

ペギーと電話で話した次の日、私はさっそく店長の柚川さんに、アメリカでの人気のこと、ウサギの着ぐるみを着たクマはアメリカでは販売されない日本限定商品であること、限定商品を欲しがるファンがたくさんいることなどを話しました。

「へー、そうなんだ。実は最近、問い合わせが多かったんだよ。よくぬいぐるみを買ってくれるお客さんがいるんだけど、いつもまとめ買いをするんだ。どうやら日本限定商品を買って海外へ送っているみたい」
「そうなんですよ!! 今回のアイテムは、ぬいぐるみの売上では過去最大のアイテムになりそうです。決して売れ残ることはありません。店舗の売上アップに必ずつながります。もし他店もぬいぐるみの人気に気づけば、あちこちから再注文が出て、本社倉庫にある在庫もすべてなくなりますよ! 柚川店長、私はアメリカで勤務して、今回のアイテムは日本でも必ず売れるって確信したんです。他店に在庫をとられる前に再注文しましょう!!」

「だけどね、会社のルールで在庫が切れるまで再注文できないし、この店のぬいぐるみ部門のこれまでの売上は全国にあるお店のなかでも低いんだよ。だから無理だよ」
「店長!! 最初からあきらめちゃだめですよ。だって、うちのお店の初売りは1月1日だけど、他店はほとんど2日からじゃないですか!! それに、ぬいぐるみのことは雑誌や広告にも載っているのに、開店してすぐに売り切れじゃ、ぬいぐるみを楽しみに買いにきたお客さんがガッカリしてしまいますよ!!」

「うーん、そうはいってもねぇ……」
「本社の責任者や在庫センターに相談する前から無理って決めつけちゃダメですよ!!必ず売上に貢献するし、それに、お客様の期待を裏切らないためにも、いますぐに在庫の調整をしてほしいんです」

「よし、わかったよ。でも、もし責任者が追加注文はできないといったら、あきらめろよ。正月の商品はぬいぐるみだけじゃなく、福袋だってあるんだからな」
「ハイ!!」

そういうと柚川店長は、すぐに本社の責任者に電話をかけ、1月1日の初売りプランとぬいぐるみの在庫調整の相談を始めました。そして、ぬいぐるみ追加の重要性を一生懸命に説明してくれています。

柚川店長と責任者が電話をしているあいだ、私は「だいじょうぶだ、ぜったい入荷してもらえる。売れるっていう確信があるんだ。会社のルールなんて関係ない。それよりも、なんとしても商品を多く入荷してもらわなくちゃ」と熱い視線をマネージャーに送り、在庫調整の相談が成功するように応援していました。

そして数分後。柚川店長が電話を終え、受話器を置きます。そして私のほうを見て、笑顔でこういってくれたのです。

「ぬいぐるみの追加、OKとったぞ!!」
「やったー!! よかった」

●ルールは「制限する」ためだけにあるんじゃない●

私の熱い思いと柚川店長の真剣な説得により、ぬいるぐるみは当初の予定よりも多く入荷できることになりました。あとは初売りが始まるのを待つのみです。

そして1月1日、初売りの日がやってきました。開店の1時間前にはすでに、お店の入り口に大勢の人が福袋や正月限定商品を目当てに並んでいます。ぬいぐるみはお店の入り口にメインとして置かれています。準備OKです。

9時ちょうど、さぁ開店!!

開店と同時にカゴを持ったお客さんが店内になだれ込み、メイン台に置かれたぬいぐるみをカゴにどんどん入れていきます。山のように積んであったぬいぐるみは、見る見るうちに次々と売れていきます。

大成功です! 予想どおり、このぬいぐるみは大人気商品になったのです。在庫をチェックをしながら店内の様子を見ていると、会計を終えた女の子がうれしそうに、ぬいぐるみをしっかり抱きかかえて出口に向かう姿が見えました。

事前に追加の注文を出しておいたおかげて、普通に買うお客様だけでなく、まとめ買いのお客様にも対応できるだけの商品確保ができました。もし追加注文をしていなければ、今頃はすでに品切で、お客様に迷惑をかけるところでした。あの女の子のうれしそうな笑顔も見ることができなかったでしょう。

本社から送られてきたこの商品の企画書を最初に見たときに、私は「これはきっと売れる!」と思いました。アメリカでの仕事の経験が、その確信につながったのです。でも、通常の「会社のルール」では、これだけの商品確保はできなかったですし、なので当然、この日の「成功」も得られなかったはずです。

たしかに「ルール」は大切です。でもそれは、よいことをする、あるいは、お客様に喜んでもらえることをすることを、ただ「制限する」ためにあるわけではないはずです。たとえ「ルール」では「できない」となっていたとしても、それが「お客様のためになる」「こうすればきっとお客様に喜んでもらえる」という確信があるなら、情熱と信念を持って訴えるべきです。

確信があるなら、ルールだからといって、ぶつかる前からあきらめない。自分の確信を一生懸命説明し、説得し、理解してもらうよう、粘り強さと力強さを発揮する。それがお客様の笑顔につながることもある。ルールを変えることもできるのです。

大切なのは、ルールを守ること、ルールにしばられることではなく、お客様の笑顔のためになにができるかを考えること。それを、自信を持って主張すること。ぬいぐるみを抱きしめる女の子を見て、あらためてそれを感じました。

──続きは書籍でお読みください──




まえがき もくじ 本文より




加賀屋克美 (かがや・かつみ)
1972年1月31日、東京生まれ。ディズニーが大好き。18歳から5年間、東京ディズニーランドでアルバイトをしたのちに、ディズニーストアへ入社。ディズニーストアには5年間在籍したが、そのうちの1年は、本場アメリカのディズニーワールド内にあるディズニーストアで勤務する。その後、タリーズコーヒージャパン、遊戯施設のメンテナンス会社等で経験を積み、2005年4月1日、小売業・遊戯施設の感動経営コンサルティング会社として加賀屋感動ストアーマネージメントを設立。従業員とお客様が共感できる楽しい職場づくりをめざして活動中。これまでの実績として、2005年愛知万博のグローバルトラム接遇フォローアップや、新規店舗の立ち上げプロジェクトアドバイザーなどがある。
親友である香取貴信氏の著書『社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった II 《熱い気持ち編》』(こう書房)で「夢を現実にする男・佐賀屋くん」として紹介され、多くの読者の支持を得、香取氏とともに全国各地で講演会に出席するように。
今後の活動についてはオフィシャルホームページ(http://www.good-businesspolicy.com)をご覧ください。




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